2017年11月9日 更新

OMEGAに遺るコアークシャル、発明者ジョージ・ダニエルズ博士の功績【前編】

20世紀に入っての機械式時計の革新的な進化はOMEGAの時計に組み込まれている脱進機『コアークシャル』の発明です。開発者であるジョージ・ダニエルズ博士はこのメカニズムを後世に残すため大手時計メーカーにプレゼンします。しかし…。

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過去250年間最高の時計職人

– Dr. George Daniels CBE (171579)

この写真は革新的なエスケープメント(脱進機)の開発者ジョージ・ダニエルズ博士です。
イギリスでは過去250年最も偉大な時計製作者と呼ばれています。
コアークシャルと呼ばれるこのメカニズムの開発により、機械式時計のオーバーホールの間隔が5年間から10年以上に保たせる事が可能になりました。
現在『コアークシャル』はOMEGAの時計のみに採用されています。

CO-AXIAL(コアークシャル)とは?

CO-AXIAL(コアークシャル)は従来の機械式時計物とは異なる、新しいタイプの脱進機です。1974年に博士によって開発され、異なる点は歯車を同軸上に配列した事、レバーの爪の数が2→3に増えた事です。
 (172346)

上の写真はROLEXの脱進機の構造です。2つの大きな爪が歯車を引っ掛ける構造になっています。ROLEXも新しい脱進機を開発していてやはり時計のムーブメントでは脱進機の構造は重要なパーツでもあり、時計の心臓部、まだまだ改良の余地はある物と推定されます。
コアークシャルの構造は上記リンクでご覧ください。このリンク先のInstagram動画で一目瞭然ですね。通常のROLEXのエスケープメントと比較すると、まずルビーが3つになります。そして歯車が2つ同軸になる事はそれだけスペースが必要になります。

歴史あるスイスのウオッチファクトリーブランドが難色を示すのはこのスペースを必要とする点だと推測します。

OMEGA Co-Axial calibre 9301: How it works

Rolex calibre 3255

そしてこのコアークシャルの実際の動きはOMEGAのYouTubeでご覧下さい。
更にROLEXのキャリバー3255の動画と比較する動きの違いが一目瞭然です。

捨てる神(ROLEX&パテック)あれば拾う神(OMEGA)あり

Businesswoman looking at st...

Businesswoman looking at strategy sketch

コアークシャルは特許所得が1980年です。実際にOMEGAで量産化されるまでは約10年以上の年月が経過します。
その間博士は、この革新的なエスケープメントを広く世に送り出したいと考えて様々なウオッチメーカーにこのコアークシャルを提案したそうです。
ウィキペディアによると、ロレックスからは門前払い、パテックフィリップに熱心に売り込みいい所まで行ったのですが、結局パテックの幹部の「時期尚早」という判断で、頓挫したのでした。
さてこれで、捨てる神と拾う神がわかりました。しかしあくまでもウィキペディア上に書いているだけで、ROLEXやパテックフィリップが「売り込み」があったかどうか、それを認めたかは定かではありません。
唯一の真実はこのエスケープメントを採用した「拾う神」がOMEGAであり、ダニエルズ博士から使用権利を得た事だけは紛れもなく真実です。

複雑時計作りの天才、ダニエルズ博士は20世紀のプレゲ

 (171920)

ジョージ・ダニエルズ博士は、1926年生まれ2011年に85歳で亡くなりました。コアークシャルの開発が彼の最もポピュラーな発明ですが、他にもユニークな時計を27種類(試作品を除く)開発しています。ポケットウォッチタイプの複雑時計を多く開発して20世紀のプレゲと言っても過言ではありません。
上の写真が彼がこれまでに制作した代表作がこの『Space Traveller』です。
この『Space Traveller』開発の背景にはエピソードがあります。
ある有力なコレクターのチューリッヒでの晩餐にダニエルズ博士が出席した時の事、そのコレクターが博士の懐を小突きました。
「何がそこに入っているんだい?」博士の懐にあったのは開発途上の独立した、2枚のガンギ車から成るエスケープメントを搭載した懐中時計だったのです。
このコアークシャルを彷彿させる懐中時計を見るとすぐに、かのコレクターから即座に売ってくれる様、懇願されます。当初売る気が無かった博士ですが、コレクターに熱心に説得されて結局売却します。しかし即座に後悔するのです。
ここからがジョージダニエルズ博士の人柄が顕著に出ている姿なのでは?と思う行動にでます。
なんと再び時計を製作始めますが、コレクターに寄付した時計を徹底的に向上させる手法です。複雑さと精度両方を向上させてできた時計が写真のポケットウォッチです。
通常のムーンフェイスとは違う、恒星時間と太陽時間の両方を同時に表示する複雑時計です。
これが意味する事は恒星時間と太陽時間の時差を計算するためでした。
18世紀には星で時間を合わせていました。しかしこの手法では1日3.555分の誤差が生じるためそれを補正する機能です。

あふれる時計職人魂、しかし勘だけに頼らない学術的な根拠を求める姿勢

– Dr. George Daniels CBE (172036)

歯車同士の動力伝達の許容誤差を年差0.8秒と見越して、博士はケンブリッジ大学の友人に連絡を取ります。以前よりその友人が時計に対する数学的興味がある事を知っていたからです。
彼の友人は直ちにダニエルズ博士に返事をくれました。その友人はずば抜けて優秀な数学者で、名前はなんと!『ダニエルズ教授』です。
彼は1日あたり0.28秒という最適な比率を計算してくれました。
この結果にジョージ・ダニエルズ博士は大変満足していたそうです。
博士は日頃から周囲の人達に「パッケージツアーで火星に行く時代が来る。その時にこの時計が必要になる」と語っていたそうです。
しかしその時計の出来には博士は満足していなかったと博士の助手は語っています。
その想いで、「『Space Travelle’s Watch』は今世紀最大の宇宙探検、月面に着陸したアメリカ人を祝して」とつけられたのだでした。

OMEGAに引き継がれるコアークシャル

オメガ・ウォッチ: Speedmaster - Moonwatch Omega Co-Axial Chronograph 44.25 mm - 311.93.44.51.99.001 (172231)

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