時計発祥の地はドイツ?
さて今回のテーマであるドイツ時計とスイス時計、歴史的に見るとドイツ時計の方が長い歴史があります。ご存知の人も居るかもしれませんが、スイス時計産業はジュネーヴ周辺で自然発生した訳ではありません。
スイスのジュウ渓谷には宗教弾圧でフランスなどから時計師達(彫金師含む)が流れてきた説が有力です。当然ドイツからも時計師が流入してきています。
そして多くの時計師たちがスイスへ集結して現在のスイス時計産業の礎を築きました。また懐中時計も実はドイツで16世紀初頭に開発された説が有力です。
世界最初の時計に関しては諸説あります。現存する時計としては「ニュルンベルクの卵」というゼンマイ式時計が16世紀に造られたとされていて、僕はドイツで製作された時計が世界最古の時計として有力と、考えています。
当時のニュルンベルクには優秀な錠前職人が多く存在して、その中のひとり若き錠前鍛冶ピーター・ヘンラインが世界最初のポケットウォッチを開発したのです。
ただ、現存するニュルンベルクの卵は1550年製で、前述のピーター・ヘンラインが没後の物になります。それゆえにニュルンベルクの卵はヘンラインの物では無いと言われています。
ヘンライン製の時計は2番目の写真、セイコーミュージアムから引用した1510年の写真は彼の製品です。ご覧のように筒形で文献によると40時間のパワーリザーブを誇るとされています。
筒形の時計は現在ドイツ国立博物館に実在しています。セイコーも実物そして裏付けできる文献がある事でこれが世界最古の携帯時計としているのです。
いずれにしても現段階ではドイツで世界初の懐中時計が生まれた説が有力と考えられます。当時から交通の要所として栄えたニュルンベルクで自然発生した鍛冶職人達が錠前を製造、そこで培った技術が後にゼンマイの開発へ発展したのでしょう。
そう考えると、ドイツ時計もスイス時計、どちらも変わらない技術力を持っていたと言えます。
Aランゲ&ゾーネを頂点としたブランド構造
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さてドイツ時計界は横綱Aランゲ&ゾーネを頂点にしたブランド構造が特徴です。これは別に時計界の重責を担っていることだけでは無く、人材の提供や資本の注入などをする文字通りドイツ時計界の牽引役となっています。
例えばノモス・グラスヒュッテ、このブランドはAランゲ&ゾーネの出身者が設立したブランドです。ノモス以外でもランゲ&ハイネも同社出身者が設立しています。
ただ同国時計界のドンでは無く、人材育成にも力を入れている模範企業なのです。
意外に工数が多い?
さて機能的で優秀な工業製品を多く世に出すドイツプロダクト。さぞかしドイツ時計も同じかと思いきや、意外に工数が多いことでも知れています。
無駄?と言うと語弊がありますが、必要なことには手を抜かないということです。例えばAランゲ&ゾーネは一度組み立てた時計を再度分解して組み直す作業があります。
僕はこのことを雑誌の広告で知りました。時計業界はクオーツ・クライシス時に非合理的な作業が多いとされ、多くのスイス時計ブランドがその工程の見直しを迫られました。
特に当時のオメガはGハイエックによって、工程ラインの大幅な合理化をしたとされます。結果オメガは時計を効率良く量産するノウハウを構築していったのです。
またエングレービングもドイツ時計ならではの特徴です。もちろんスイス時計にもある装飾ですが、ちょっとスイスの物と異なります。
有名なAランゲ&ゾーネのハンドエングレービングは部品ひとつひとつに彫金を施し、美しく見せています。彫金師による手作業のためオンリーワンの仕上がりの時計になることが特徴です。
このような手数を掛けたりすることは時計の完成日数に時間を要します。徹底した効率化するドイツ本来の合理的な製品造りからすると、逆行している印象があります。
しかしドイツ時計メーカーはそれらの工数の多さを否定しません。時計造りでは必要工程と考えているのでしょう。
皆さんもドイツ時計を見直してみませんか?しっかりとしてた製品造りと芸術的な仕上がりのドイツ時計を楽しんでください。